事業再生・債権管理Newsletter2020年10月号を発行いたしました
2020.10.13
事業再生・債権管理Newsletter2020年10月号を発行いたしました。
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1. 民事再生の伝家の宝刀 -管理命令で経営陣が経営権を失う時- (弁護士 宮本 聡)
はじめに
民事再生は、管財人が選任されず、監督委員の監督の下、それまでの経営陣が経営権を維持しつつ事業再建にあたる、DIP型を基本とする手続です。実際にも大多数の民事再生案 件はDIP型で手続が進められており、この点は、管財人が経営 陣に代わって財産を管理・処分する管理型を基本とする破産 や会社更生と異なる、民事再生の特色といえます。
しかしながら、近時の民事再生案件、例えば、株式会社レナウン(令和2年5月申立て/東京地裁)、学校法人明浄学院(令 和2年3月申立て/大阪地裁)、別稿でご紹介している東京高 決令和2年2月14日(金法2141号68頁)の事案(令和元年8月 申立て/東京地裁)等において、管財人が選任される事例(管 理型民事再生)が見られます。過去を振り返ってみると、かつて、東京地裁では管理型民事 再生は見られませんでしたが、この10年ほどで見られるようになってきました。
そこで、本稿では、DI P型を基本とする民事再生において 「伝家の宝刀」ともいわれる管理命令が発令されるのはどのような場合か、実務の運用にも触れつつご紹介します。(続きはPDFをご覧ください。)
2. フィリピンの人的財産担保法 (弁護士 丸山 貴之)
はじめに
フィリピンにおいて、共和国法11057号(Republic Act No. 11057)の人的財産担保法(Personal Property Security Act。以下「人的財産担保法」又は「法」といいます。)1 が2019 年2月9日に、人的財産担保法施行規則(Implementing Rules and Regulations of Republic Act No. 11057 (Personal Property Security Act)。以下「人的財産担保法施 行規則」又は「規則」といいます。)2 が2019年12月3日に、それぞれ施行されました。人的財産担保法は、国連国際商取 引法委員会の2016年担保取引に関するUNCITRALモデル 法(UNCITRAL Model Law on Secured Transactions (2016))をベースに制定されたものです3。
人的財産担保法及び人的財産担保法施行規則は、動産、 債権、有価証券、株式、知的財産権等を含むすべての有体・ 無体の人的財産4 への担保設定、担保権の対抗要件や優先 順位、担保実行の方法等について規定するものです。
人的財産担保法及び人的財産担保法施行規則の施行前 は、担保目的物の種類等によって、担保権の設定、対抗要 件具備、実行の方法等が異なっていましたが、人的財産担 保法及び人的財産担保法施行規則により、人的財産について統一的な担保設定、対抗要件、実行方法等が定められました。
人的財産担保法の施行により、譲渡担保法(Chattel Mortgage Law)、民法(Civil Code of the Philippines)の担保権に関する規定、資産登記令(Property Registration Decree)の動産譲渡担保の登記に関する規定が廃止されて います。
本稿では、人的財産担保法及び人的財産担保法施行規則 に定められる人的財産への担保権の設定、対抗要件、実行 方法等について、ご説明いたします。(続きはPDFをご覧ください。)
1:人的財産担保法の条文につきましては、以下のウェブサイトをご覧ください。
HTTPS://WWW.OFFICIALGAZETTE.GOV.PH/DOWNLOADS/2018/08AUG/20180817-RA-11057-RRD.PDF
2:人的財産担保法施行規則の条文につきましては、以下のウェブサイトをご覧ください。
HTTPS://WWW.OFFICIALGAZETTE.GOV.PH/DOWNLOADS/2019/10OCT/20191010-IRR-RA-11057-RRD.PDF
3:2020年9月現在、フィリピンを含め8か国において、担保取引に関するUNCITRALモデル法をベースにし、又はその影響を受けた法律が制定されています。
HTTPS://UNCITRAL.UN.ORG/EN/TEXTS/SECURITYINTERESTS/MODELLAW/SECURED_TRANSACTIONS/STATUS
4:人的財産には不動産は含まれません。また、人的財産担保法及び人的財産担保法施行規則の対象となる人的財産からは、航空機及び船舶は除外されています。
3. 集合債権譲渡担保権が担保権消滅許可の対象になるとした事例 ―東京高裁令和2年2月14日第22民事部決定― (弁護士 平岡 絢)
はじめに
担保物権を設定するような目ぼしい資産を所有していない 企業においては、将来発生する債権をまとめて譲渡し、これを担保に資金調達を行う場面も多いかと思いますが、当該債 権譲渡が債権譲渡担保権の設定としての性質を有するのか、或いは真正な債権譲渡に当たるのかについては、企業の倒産局面においてしばしば問題になるところです。仮に当該債権譲渡が担保権の設定としての性質を有すると判断されれば、かかる債権譲渡は管財人による担保権消滅許可申 請(破産法186条1項、民事再生法149条1項)の対象となり、 債権者にとっては満額の債権回収の道を断たれる等の不都 合が生じ得るため、とりわけ債権者にとっては関心の強い問題かと思います。
今回ご紹介する東京高裁令和2年2月14日第22民事部決定(金融法務事情2141号68頁、以下「本件」といいます。) は、まさに債権譲渡契約に基づく集合債権の譲渡が実質的には譲渡担保権の設定に当たり、担保権消滅許可の対象になると判断した事例であり、今後の取引実務において大変参考になる事例です。(続きはPDFをご覧ください。)