事業再生・債権管理Newsletter 2024年1月号を発行いたしました
2024.01.31
事業再生・債権管理Newsletter 2024年1月号を発行いたしました。
事業再生・債権管理Newsletterバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
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1. 自然災害ガイドラインのご紹介~令和6年能登半島地震の発生を受けて~(弁護士 大江 祥雅)
第1 はじめに
ご承知のとおり、元日早々、令和6年能登半島地震が発生しました。
この原稿を書いているのは1月中旬ですが、報道によると、多くの方が亡くなり、また避難生活を強いられるなど非常にご苦労をされている方も多数おられます。企業においても、事業が停止したり、設備が破損するなど、経済的にダメージを受けたものと思います。お悔やみを申し上げますと共に、一日も早い復興をお祈り致します。
地震に限らず、自然災害が発生した場合は、個人・企業の経済に大きな影響があり、借金などの債務を返済できない状態に陥ったり、既存の債務が原因で復興のための資金を
借りることができないという問題(二重債務問題)などが生じますが、そのような場合における個人の債務を調整する際の指針として、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下「自然災害ガイドライン」といいます。)があります。一般の法人・企業の皆様におかれましては、直接関与する機会は少ないかもしれませんが、自然災害ガイドラインの内容や趣旨は、窮状に陥った取引先との関係にも応用し得るとも思われますので、紹介致します。...(続きはPDFをご覧ください)
2. 普通預金を別段預金に変更して貸金債権と相殺することは、破産法71条1項2号の財産処分行為に該当するか~東京地判令和4年11月9日金融・商事判例1666号23頁(弁護士 大橋 君平)
第1 はじめに
破産法67条は、破産債権者が、破産手続開始時点で破産者に債務を負担している場合の相殺を、原則、認めています。相殺の担保的機能に対する期待を保護するためといわれます。
他方、破産手続の基本原則である債権者平等を損う相殺は禁じられています。たとえば破産法71条1項2号は、「支払不能になった後に契約によって負担する債務を専ら破産債権をもってする相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を破産者との間で...締結することにより破産者に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき」は、相殺できないと定めています。これは、破産者と破産債権者との新たな取引等で破産債権者に債務が発生すると、破産者が債権取得の対価を代物弁済に供したのと同視できる場合があるため、支払不能後の代物弁済が偏頗行為否認の対象となることとの均衡を図るものといわれます。
今回ご紹介する裁判例は、X社が、Y行に対して借入金のリスケジュールの要請をした際、「X社の顧客に対する請負代金債権について普通預金口座に入金があった場合に、当該入金額を別枠でプール(確保)する」という方針がY行から示され、X社が口頭で同意したこと(本件合意)から、これが破産法71条1項2号に定める財産処分契約に該当するかが問題となったものです。... ( 続きはPDFをご覧ください)
3. 破産管財人による債務の承認と消滅時効の中断~最高裁令和5年2月1日決定(判例タイムズ1511号119頁)~(弁護士 堀江 悠真)
第1 はじめに
一般に、債務者が「債務の承認」を行った場合には、当該債務の消滅時効は中断することとなります(民法147条3号1)が、債務者が破産し、破産手続が開始されると、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、破産管財人に帰属することになります(破産法78条1項)。
債務者本人ではない破産管財人が債務の承認をした場合にまで、消滅時効の中断効が生じるかという問題については従来必ずしも明確になっていませんでしたが、本決定では裁判所がこの点に関する判断を示しており、また、破産手続のみならずその他の倒産手続全般でも問題となり得ることから、以下、紹介いたします。... ( 続きはPDFをご覧ください)