事業再生ADR・中小企業再生支援協議会

1.準則型私的整理手続とは

 私的整理手続のうち、根拠法令に基づき制度化され、公正中立な第三者が関与して行われる手続のことを「準則型私的整理手続」といいます。
 事業再生ADR手続や中小企業再生支援協議会による再生支援手続、特定調停手続などが「準則型私的整理手続」と呼ばれています。

2.事業再生ADR手続について

(1)事業再生ADRの概要
 事業再生ADR手続は、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(以下「ADR法」といいます。)や、産業競争力強化法等の根拠法令に基づき制度化された準則型私的整理手続の1つです。
 事業再生ADR手続は、ADR法および産業競争力強化法に基づく法務大臣の認証および経済産業大臣の認定を受けた「特定認証紛争解決事業者」である一般社団法人事業再生実務家協会(通称「JATP」)が選任した「手続実施者」(事業再生に通じた弁護士、公認会計士等が選任されます。)が、債務者企業と債権者間の事業再生計画案の合意に向け、公正中立な立場で関与して進められます。
(2)事業再生ADR手続の流れ
 具体的には、事業再生ADRの利用を申請した債務者企業が策定した「事業再生計画案」(経営が困難になった原因や事業の再構築のための方策、弁済計画等が記載されます)について、その適法性、合理性等に関する手続実施者の調査を受けるとともに、対象とされた債権者(対象債権者といいます)との間で合計3回の債権者会議および期日間の面談等を通じて協議を行い、対象債権者全員一致の同意により事業再生計画を成立させることを目指します。
(詳細については、JATPのホームページ等をご参照ください。参考:一般社団法人事業再生実務家協会(JATP)http://www.turnaround.jp/
 
 大江橋法律事務所は、債務者企業の代理人や様々な立場で事業再生ADR手続を利用した事業再生の経験を複数有しています。

3.中小企業再生支援協議会による再生支援手続について

(1)中小企業再生支援協議会とは
 中小企業再生支援協議会(以下「支援協」といいます。)は各都道府県の商工会議所等に設置されており、企業・事業再生について詳しい専門家(金融機関出身者や中小企業診断士、税理士等)が企業からの相談に対応してくれます。
(2)中小企業再生支援協議会の手続きの流れ
 まず、会社が窮境に至った経緯や現状を決算報告書や月次試算表などを提出して支援協に説明すれば、今後の進め方についてアドバイスを受けることができます(第一次対応)。 第一次対応で支援協での支援が妥当であると判断されると、再生計画策定支援に移ります(第二次対応)。
 会社において作成した事業計画をもとに、支援協は、専門的知見を有する弁護士、公認会計士、中小企業診断士等の外部専門家の協力のもと、事業計画を検証し、会社による再生計画案の策定の支援を行い、提出された再生計画案の合理性や公正性等を調査・検証し、必要に応じて、会社において再生計画案を適宜修正して完成させます(会社が支援協の支援なく自ら弁護士や公認会計士・税理士等の専門家の助力を得て再生計画案を作成して支援協に持ち込み、支援協がその合理性、公平性等を調査・検証する場合もあります。)。
最終的に再生計画案に問題がないことが確認されると、金融債権者会議において金融機関に再生計画案の是非を問い、金融機関全員がこの再生計画案を了解すれば、再生計画が成立します。その後、会社は、再生計画に定めた経営改善施策に努力し、また返済計画に基づく返済を行い、金融機関は金融支援(リスケジュール、デット・デット・スワップ(DDS)、デット・エクイティ・スワップ(DES)、債権カットなど)を実行することになります。
 金融機関にとっては、公平・中立な支援協および専門家の調査検証を経ていることから、再生計画案の信頼性が高まり、協力し易くなると考えられますし、会社、債権者のいずれにも一定の税務上のメリットがありえますので、支援協の活用により事業再建がよりスムーズに実現する可能性が高まります。
 
 大江橋法律事務所は、債務者企業の代理人として、中小企業再生支援協議会を利用した事業再生も複数経験しています。

4.事業再生ADR・中小企業再生支援協議会に関するニュースレター

(1)事業再生ADR利用のすすめ
(2)事業再生ADR手続における商取引債権に関する考慮規定 ~産業競争力強化法の改正~
(3)事業再生ADR手続の概要
(4)中小企業再生支援協議会スキームの概要
(5)産業競争力強化法改正と事業再生ADR・債権譲渡
(6)連載コラム:コロナ禍での倒産案件の動向③―私的整理(協議会・事業再生ADR)編―
(7)事業再構築補助金

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